エコ商売

 よく知っている若い人が研究室を訪ねてきた。いい話があるのだという。何かと思うと、地球環境に優しい仕事をしているのだという。CO2吸収能の高い桐の品種で森作りをするのだという。森作りそのものを技術的にやっているのかというと、それは地元の林業家に委託しているのだと言う。仕事はその苗を森作りをしたい企業等に売ることなのだという。このあたりで「?」が点灯し始める。それにしては単価が高い。それに一種類の木、しかも同一クローンの個体だけで、世界中に森を作るというのは、地域生態系の破壊に繋がる話であって、とてもではないが環境に優しい森林再生とはいえない。このあたりの技術的な回答はなかった。そうこうするうちに「先輩」と称する人物が現れた。「代表取締役」とある名刺を見ると、先にきいた社名と違う。「代理店です」とのこと。なるほど。「先輩」は生態学的に間違ったことも含め、立て板に水という感じで説明を始める。こちらには口を挟ませない勢いだ。クリアファイルに入った資料を見せる。洞爺湖サミットの本に載ったとか、新聞に載ったとか、という話だが、新聞記事には新聞名も掲載月日もないのであった。その樹木の生育状況についての学術的な裏付けはあるのかと問えば、「そういう細かいことは」という。学術の場に来て勝手にまくしたてておいて、こういう言い草はふざけたものだと思った。で、結局何のために来たのかというと、どうやら現在の活躍を見てほしかったわけでも、苗を買ってほしかったわけでもなく、「一口25万円」の賛助金を支払って、仲間になって欲しい、ということのようだった。問いただせば、N君もそこで働いているというのではなく、出資して勧誘側に回ったということのようだ。
 この商売が画期的なのは、「出資を募る」という形ではなく、「任意の賛助金」を集めるというスタイルを取っていることだろう。配当も一切保証しないわけだから、どうやっても「詐欺」にはならないと踏んでいるものと見える。どうあれ、まともな商売ではないことは明らかだった。苗を売ること、森林を作ることよりも、この賛助金を集めることが、主要なビジネスになっているようだ。
 その辺が見えたところで、早々にお引き取りいただいた。よく知る若い人ががそういう仕事にぶら下がっていることには、苦々しいものが残った。

 「なんだかよさそうなことのような気がする」という素人の善意につけ込む「エコ商法」といったところなのだろう。出資して代理店側に回っている人にも、一攫千金を夢見る人と、まじめに「よいこと」と思ってやっている人とがいるのだろう。久しぶりに訪ねてきてくれたN君は後者であってほしいものだと思う。そして早く目覚めてほしいと思う。
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by kotoba1e | 2008-11-12 11:19 | 自然と景色
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