7〜8年前までアホのように酒を飲んでいていろいろとあって、それからはずっと控えてきたのだが、当時も酔えればなんでもいいという酒飲みでは決してなくて、結構うるさいことを云って酒を選ぶなんだか嫌な酒飲みだったと思う。
だから糖類とか酸味料だとかが入っている酒は馬鹿にして絶対飲まなかったし、醸造用アルコールが入っている酒も、馬鹿にしているところもあった。精米度合には必ずしもこだわらなかったが、よく磨いた米を使った酒の香りはわかったような気持ちでいた。そんなことを言ってはいても、結果ああいう体たらくであるから、味なんて本当はどうでも良かったのかもしれない。あれは多分なにかの言い訳だったのだろう。
今晩、家族が寝静まったので、台所の下で見つけたアルコールをなめてみたのだ。料理酒がわりにつかっている「菊正宗ピン」である。糖類、酸味料、醸造用アルコール、不純物のオンパレードのような安酒だ。
こういうものに手を出すようになってしまったのも情けないが、それを飲んで、結構旨いと思ってしまった自分がまた悲しい。いままで偉そうに語ってきたうんちくなんて、全部嘘だということなのだ。こういうものでも十分であることが分った。もうそういう酒でいいのである。そういう酒で酔えればそれもまた佳き哉。それにしてもこの変な安心感は何だろう? やっぱり安物だったのだ、俺も。
こんな風に安上がりに歳を重ねていくのも、そんなに悪いことではないのかもしれない。